カウンセリングは、クライアントの話を聴いて、言葉と経験で治療していきます。だからと言って周囲の人の話を聴くのが上手な人が、明日からカウンセラーとして活躍できるかというと、自称「カウンセラー」は名乗れても、実際に治療はできません。
病院に行くとカルテがあるように、カウンセリングにも「逐語(ちくご)記録」というカルテがあります。この記録を見て治療方針を立てたりカウンセリング内容を検討します。
今回は、この逐語記録について、その必要性や効果についてご紹介します。
カウンセリングの目次
逐語記録を作成するときのルール
逐語記録とは、カウンセラーとクライアントのやり取りを、すべて文字に起こした記録の事を言います。同じクライアントと何度かカウンセリングの回数を重ねている場合は、会話を記録するだけではなく、プラスアルファとして、会話と同時に行動記録をつけたり、カウンセリングで自信の無い箇所を後の検討材料としてメモするなどの作業があります。
逐語記録は、もちろん面談記録でもありますので、面談の日時・場所・所要時間やクライアントの情報を記載します。しかしその際に注意すべき事は、クライアントを特定できる情報は掲載しないという事です。クライアントの本名はもちろんの事、所属する会社や学校、社員番号などを掲載する事は、守秘義務に反しますので、「30代女性会社員」「20代男性アルバイト」など大まかな表示にしておくことが必要です。
スキルアップの為の逐語記録
ただ聞き上手なだけで、カウンセラーとなって心を治療する事は難しく、カウンセラーも更なる技術を得るために、多くの技術を持つベテランカウンセラーにチェックしてもらう必要があります。
カウンセリングの内容を記録し、そのカウンセリングの進捗内容を、「スーパーバイザー」と言われる人がチェックしてくれます。このようにスーパーバイザーよりアドバイスを受ける事を「スパービジョン」と言います。
今後の方針を決定する為の逐語記録
カウンセリングというものは、基本的には1対1で行うものであるため、自分以外のカウンセラーのスタイルを見る機会がなく、自分のカウンセリングがクライアントの治療として成り立っているのかを判断する材料がありません。
そこで、逐語記録を取っておき、それをカウンセリング終了後に数名で話し合う事で、一人では出せなかった見立てができる上、意外に自分が得意とする方法が、クライアントにとっては全く伝わっていなかったという場合もあり、客観的に自分のカウンセリングを見つめる事は、得ることが多くあります。
最後に
人が10人いれば10通りの、100人いれば100通りの性格があり、ある程度のパターンに当てはめられたとしても、細部に至ってはやはり全く違う人格です。そんな多種多様な人たちのカウンセリングをするのは、想像しただけでその努力は相当なものです。
カウンセラーも、いつどんなカウンセリングを必要とするクライアントが来るかもしれませんので、日々訓練と成長でもあり、又今までの事や今後の事を考えるきっかけにもなります。傾聴するポイントや復唱する箇所、話を誘導する合いの手など、客観的に逐語記録を読み返したりして、引きるアップを図っています。そんな細やかな作業があるからこそ、人が人を言葉で治療する事ができるのかもしれませんね。