毒親とは、子供を過剰にコントロールして支配しようとしたり、暴言や無関心などを繰り返すことで、子供にとって毒となるような悪影響を与える親のことをいいます。
毒親の影響を受ける子供は、それに対して無意識に負担や抵抗を感じます。なんとなくやる気がでなかったり、人間関係を健全に構築できないなど、社会生活における支障の原因となります。
毒親には様々なタイプがあります。カウンセリングなどで改善を図る場合にも、どのような行動や思考から毒親に陥っているかは重要な要素です。代表的な二つの例についてです。
カウンセリングの目次
過剰に子供をコントロールしようとする毒親
子供の行動や人生の進路など、子供に関する事柄を自分の意のままにコントロールしようとする親のことです。
子供が自分の思い通りになることを当然のこととして認識し、子供がそれに異を唱えたり反抗したりすると、脅したり、激昂したりすることで、子供の決定や行動を妨げます。
このタイプの毒親にとっては、自分が子供に期待することが最も重要な事柄のため、子供が心から望むことであっても、それが自分の望みと一致しなければ不満を抱きます。
子供が自分のコントロール下において達成することは喜んだり褒めたりしますが、それは本当に子供を祝福しているのではなく、自分の思い通りになったことを喜んでいるにすぎません。
子供をコントロールしようとする親の性格的な特徴は、非常に自己中心的であることです。
コントロールしようとする心理の根源にあるものは、自分自身の人生に対する潜在的な不満や失望、不安などです。
子供のコントロールに成功することで、自分の中の不満や不安を解消しようとします。本人はそのことを自覚していない場合が多く、子供のために行っていると思い込んでいます。
子供が自分のコントロールに従わない場合の行動は様々ですが、思い通りにならないことに腹を立てて子供に行う行動が、肉体的な暴力や精神的な暴言にあたる場合もあります。
過干渉によって子供を息苦しくさせる親
毒親による子供に対する過干渉には、様々な要因があります。一つは、自分の子供を含めて、自分以外の他者から拒否されて一人になることを恐れていることです。
このタイプは子供を安心させるのではなく、子供に過剰に干渉したり世話を焼くことで、自分自身を安心させています。
子供が自分の干渉に従わない場合は、自分が取り残されたような気になって非常に不安になるため、子供に極端に絡みついたりしがみついたりすることで、子供に大きな圧力をかけます。
次のタイプは、子供は自分のものであり、自分の思い通りにするのは当然と考えている場合です。
子供を自分の私物であるかのように考えているので、子供が自分と異なる考えや好みを持つことを認めることができません。
過干渉の毒親は子供が自分の手の中から巣立っていくことを無意識に恐れるため、子供が独立した一人の個人として行動しようとすると、それを全力で阻み、子供の努力をくじこうとします。
自分の干渉を子供が否定した場合、毒親は大げさに嘆き悲しんだり、子供をなじったりすることで、子供に罪の意識を抱かせます。
本来自分を守り、導いてくれるはずの親から独立心を挫かれた子供は、自分に自信を持つことができなくなったり、自分の将来や夢などに極端に無関心になったりします。
毒親についてもっと詳しく学びたい!おすすめの書籍3選
毒親に関する知識や対策を学ぶことができる書籍についてです。
不幸にする親―人生を奪われる子ども
D. ニューハース 著
講談社 (2008/1) / 単行本 278ページ
臨床心理学の博士であり、家庭問題を扱う心理セラピストとして、親の不健康なコントロールや虐待を受けた人のカウンセリングで活躍する著者の本です。
決断することができず物事を中々決められない、なぜかいつも損な役回りを引き受けてしまう、などの生活上の問題について、その根源を子供時代の傷に求めます。
親の過剰な支配が人生を蝕むトラウマとして作用していることに気が付き、支配が支配を生む不幸の連鎖を自分の世代で断ち切ることを目的としています。
子供に悪い影響を及ぼしてしまう親のタイプを8つに分け、かまいすぎて子どもを窒息させる親、常に自分の都合が優先する親、責任を果たせない親など、タイプ別に傾向と対応策を提示します。
毒になる母 自己愛マザーに苦しむ子供
キャリル・マクブライド 著
講談社 (2015/10) / 文庫 272ページ
毒親のうち、自己愛が強すぎる母親とその娘の関係に注目してまとめられた本です。心理療法士として25年以上カウンセリングで活躍し、結婚と家族問題についての専門家である著者によるものです。
自己愛の母親とその娘の特徴について詳しく記されており、父親の立場や恋愛関係に及ぼす影響なども記載されています。
自己愛が強すぎる母親の束縛から逃れて、本当の自分自身と人生を取り戻すための指針が記されています。
著者自身も自己愛の強すぎる母親からの影響に苦しんだ一人であり、同じ悩みに苦しむ読者への勇気と励ましが伝わってくるような内容です。
母親の自己愛度を知るチェックリストで母親からの自分への影響度を知ることができ、回復のための5つのステップを実行することで、セルフカウンセリングをすることもできます。
毒親についての知識だけでなく、セルフチェックやケアも行うことができる本です。
毒親からの完全解放 本当の自分を取り戻して幸せになる7つのステップ
影宮 竜也 著
アチーブメント出版 (2014/10) / 単行本 288ページ
毒親専門のカウンセラーとして親子問題の解消のために尽力し、カウンセリングスクールの代表を務める著者の本です。
著者自身も実の母親との壮絶な裁判を経験し、三十年以上の毒親の支配から脱出したという経験を有しています。
300人以上の人々を毒親から解放してきたカウンセラーが提示する7つのステップによって、自分を取り戻し自由になる方法を探る本です。
終わらないマイナス思考やなぜか上手くいかない人間関係など、生きづらさの原因の多くは親との歪んだ関係の影響によるものだと捉え、子供を自分の思い通りにしようとする歪んだ心を分析していきます。
毒親のパターンをネグレクト、過干渉、精神的虐待、肉体的虐待、性的暴力の5つに分けて解析しており、行動の傾向やそれによって受ける影響を知ることができます。
著者自身がその影響に苦しんだ、良心の呵責を感じることのないサイコパスの精神病質についても触れられています。
毒親をパターンに分類することによる知識の整理と、毒親の悪影響をいかに断ち切って自分の人生を歩んでいくかの実践について、バランスよくまとまっています。
共依存とは、特定の相手との関係を維持することに過剰に囚われて、その人間関係に依存している状態のことです。
元々は、アルコール依存の治療の現場において提唱された概念であるとされます。アルコールに依存している夫の問題に取り組む献身的な妻が、実はその状態に自分自身の価値を見出しおており、それに依存しているような状態です。
共依存の関係において、対象の世話を焼くことに依存している者を共依存者といい、世話を焼かれる立場にある者を被共依存者といいます。
共依存は様々な人間関係に存在します。子供が親の欲求を満たすために期待に過剰に応えようとする親子関係や、暴力を日常的に振るってしまうパートナーに耐える自分を演じる恋人関係などがあります。
共依存の弊害
共依存者の行為は、一見すると自己を犠牲にした献身的な行為のようにみえます。本人自身もそう思い込んでいる場合が多いです。
ところが、被共依存者を回復させたり、自立を促すような活動が外部から行われると、それを妨害しようとします。
例えば、アルコール依存の患者にカウンセリングの実施を提案すると、患者のことを本当に理解しているのは自分だけだからと断ったり、患者自身に話を吹き込んで断るように仕向けたりします。
共依存者の心の底にある本当の望みは、共依存の関係を持続させることであって、被共依存者の回復ではありません。
共依存の関係に自分自身の価値を見出しており、被共依存者のために行っているように見える行為は、実は自分自身のために行っているのです。
共依存者自身がそのことに気が付かないことに加えて、被共存者も居心地の良さなどから責めたり反抗しないことが多いため、カウンセリングなどの外部の助けを求めない傾向があります。
ロマンチック蟻地獄の関係について
共依存の典型的な関係は、ロマンチック蟻地獄の関係ともいいます。
当事者はロマンチックな幻想に浸っていると思い込んでいますが、客観的に分析すると、出口がなく抜け出せない蟻地獄のような様相を表すものです。
この関係においては、共依存者は被共依存者の欲求を実現させるために極端な自己犠牲を行います。
被共依存者の問題を処理することを中心に自分の生活や人生を組み立てて、そのことを第一に考えて行動します。
外から見ると、自分よりも他者を助けることを優先しているようですが、実は自分自身の価値を他人に依存している行為です。
共依存の特徴
共依存者にはいくつかの特徴があります。
自分の価値を極端に低く捉えており、何かにつけて自分を責めたり、自分の粗探しをします。また、他者に拒絶されることを非常に恐れており、逆に自分が必要とされていると感じると、極端に大きな満足感を得ます。
自分の欲求や望みに対して抑圧的です。一見すると厳格で自己コントロールができているように見えますが、ありのままの自分になることで他者に批判されることを恐れています。
相手や事態をコントロールしようとします。自分の思い通りにならない他者や出来事に直面すると、悲観にくれたり失望したりします。
また、相手や事態がどうあるべきかについて、本当に把握しているのは自分だけだと考えています。
その他、事実を直視することが苦手である、脅迫観念に囚われやすい、何かに依存せずにはいられない、などの特徴があります。